もうひとつの定年まで
2012/5/2 赤十字 さん私は去年、会社を定年退職した。
つまり、私は仕事については「現役世代」ではなくなった。だが私は、仕事以外の分野で、まだ「現役世代」でやっている事がある。私が今でも現役でやっているのは、献血だ。かつて、父が大手術をした際、名も知らぬ方々の献血に非常にお世話になった。恥ずかしながらそれまでは献血に行こうなどと露ほども考えていなかった私だが、この事があってからは、遅ればせながらその恩を世間に返したいと思い、時々献血に行くようになったのだ。
幸い、体だけは丈夫なので、「献血できない」と断られた事もなく、ここまでやってきた。これからも健康状態が許される限りは、献血をしたいという気持ちはある。
しかし、残念な事に献血にも定年はある。まず、65歳以上の献血は、60歳から64歳の間に献血経験がないとだめだという制限がついている。私はこの条件についてはクリアーしているのでまだ献血に行けるのだが、それでも献血年齢の上限は69歳、それ以上の年齢になると、どれだけ健康であっても献血できなくなる。だから私にはもう、「献血の定年」までの期間は数年しか残されていない。これからも献血を通して人様の役に立ちたい気持ちもあるし、それについていける体力だってある。まだまだ元気なのに、年齢だけで定年を迎えさせられるのは、非常にもったいない気がするのだ。
近年、献血者の数がどんどん減っていると聞く。特に、若年層の献血の少なさは深刻な問題となりつつあるようだ。だったら、その分を私たちにもっと任せてもらえないだろうか。若年層に献血を呼びかけるだけでなく、70歳以上の献血も健康状態に問題がない限りは認めてほしいのだ。
私が「献血の定年」を迎える前に、ぜひ採血の基準を改正してほしい。仕事で定年を迎えたからこそ、献血に行く時間も取りやすいというメリットが、私たちにはある。献血をしたいという気持ちが年齢だけが理由で阻まれ、そのために献血を必要としている人に血液が回らない、などという状態になってしまっては、元も子もないではないか。私は父が献血のお世話になっただけに「もしあの時、献血が足りず父が輸血してもらえなかったとしたら」と考えると、今でも心底怖くなる。家族に輸血したい気持ちがあっても、血液型の問題でそれができない事だってある。自己血輸血だって準備期間がなければできない。そんな時に頼れるのは献血だけなのだ。
もちろん、こんな事を私一人が考えていても、私が採血の基準を変えることはできない。今、私がやれる事は、「献血の定年を迎えるまで、できる限りの貢献をする」ただそれだけだ。
今回ここに投稿させてもらったのは、私自身の「献血を定年まで続ける」という決意表明もあるが、もうひとつ大きな理由がある。それは採血の基準を変えられる人が、こういう意見もあるというのを目に留めてくれれば、という期待だ。この投稿が「採血の基準に対する小さな一石」になることを願っている。
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