雑誌『ビッグイシュー』を販売する男性の就職
2012/5/1 希望の灯 さん駅前で『ビッグイシュー』を販売していた中高年の男性、Nさんの姿を久しく見掛けなくなったと思っていたら、マンションの管理人をしているらしいという話を地元の消息通から聞き、ある日の早朝、すれ違いざまに見覚えのある顔が住宅地に入っていった。
「あれ、誰だったかな」。男性がNさんであることを認識したのはその直後だった。
いまさら『ビッグイシュー』のことを説明するまでもないだろうが、ホームレスの自立を支援する雑誌である。
月2回発行され一部300円。このうち160円が販売員の収入になる。版元のHPによれば自立の3つのステップは①路上生活からの脱却②自力でアパートを借り、住所を持つ③その住所をベースに新たな就職活動をする。2011年12月までに販売員1280人のうち、およそ150人が就職口を得ているという。Nさんもこの中のひとりだったのだ。見た目、私と同世代、いや、見掛けは老けているけれど、年齢は下かも知れない。
そのNさんから時々、『ビッグイシュー』を買った。背筋をぴんと伸ばして雑誌を右手で高く掲げている姿は清楚で好感がもてた。暑い日は首にタオルを巻いて、小雨の日はビニールのカッパを着て雑誌が濡れないように傘をさし、駅前でイベントが開かれているときは定位置から少し移動してじゃまにならないように片隅に身を寄せていた。
炎天下の昼過ぎ、足元に置いたペットボトルの水を口に含みながらの販売は想像以上に過酷である。底冷えのする日、通勤ラッシュが引けてからもその姿を何度となく目にした。表情の中に投げやり、諦念といった感情の揺れがなく、ときに微笑んでいるようにもみえるNさんの佇まいは信念に突き動かされている修行僧のような感じも受けた。
以心伝心というのだろうか、無意識のうちに駅前でNさんの姿を追っているところがあった。Nさんも同じだったのではないか。といっても言葉を交わすのは雑誌を買うときだけである。「一部、ください」「ありがとうございます」。
おそらく他の客も一言二言の会話だったのだろう。Nさんにはオーラのようなものがあった。客はどこかでそれを感じていたのではないか。駅前のちょっとした有名人。それがNさんだった。男性よりも女性客がついていた。20代から70代ぐらいの女性層である。もちろん、男性もいた。ほろ酔い足取りで雑誌を買っている熟年もいれば、バリバリの中堅サラリーマンといった姿も見掛けた。
Nさんが管理人として就職できたのは、毎日のように雑誌を販売していたその働きぶりを評価されたからだろう。人はどこかでみている。マンション管理会社の代表がNさんに関心を寄せていたのだ。出会いというのは不思議なものである。Nさんが自らアピールしたわけでもないのに運気が芽生えてくる。中高年、定年後、熟年、シニアといった年齢はあまり重要な要素ではない。意識の持ちようである。継続は力。諦めないこと。それをNさんから改めて教わったような気がする。
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