定年後の「居場所」作り
2012/5/17 あんち黄昏 さん定年後の生活で何が困るかと言えば、居場所がない、ということだ。
「濡れ落ち葉」という言葉もあるほどに、定年後の男が家の中にずっといるのは邪魔者扱いされる。我が家も例外ではなく、うちは別に夫婦仲が悪いわけではないが、妻も私がずっと家にいることに、ストレスを感じているようだ。
あと、私がずっと家にいると、自分だけ趣味の活動であちこち出かけるのは気がひける、という遠慮もあるらしい。そんなわけで、濡れ落ち葉脱出を目指して、私もとにかく「家以外の居場所」を探そうと思った。しかし、近所の公民館でやっているナントカの会、というのはたいてい女性が多く、そこに私が入るのはとても気後れしそうだ。
その中でも男性が多そうなものを何とか探してみると、一応囲碁の会があったのだが、あいにく私は囲碁は趣味ではない。
男が定年を迎えると、たかが自分の居場所を探すのすら難しいのか、と愕然とした。そしてそれまで、不満を抱えつつもずっと続けていた仕事というものが、どれだけ自分の居場所を作ってくれていたのか、ということも痛感した。
やはり、「男は働いてナンボ」だったのだなと。
とはいえ、このまま濡れ落ち葉でずっと余生を過ごしたいとも思わない。そこで思ったのが、「居場所がないなら自分で作ってやろう」ということだ。
まず始めたことは、朝夕の散歩だ。同じように散歩をしている人などとちょくちょく会うようになり、会うたびに挨拶を交わしているうちに、そのうち会話もするようになった。そこで、さりげなく趣味の話などを持ちかけて、共通の趣味の者同士で楽しめないか、というのが、私の作戦である。
そうしたら、将棋・麻雀・園芸・ゲートボールなど、見事に趣味がばらばらだ。中には「パソコンを自作するのが趣味」など、私には到底真似のできない趣味を持つ人もいたし、無趣味の人もいた。
その中でようやく見つけたのが「釣り仲間」だ。私は釣りは結構好きで、昔はよく行っていた。「そういやここしばらくは釣りにも行ってないな、また行きたいものですね」とこぼしたら、さっそくその散歩仲間が誘ってくれた。
久しぶりすぎるほど久しぶりの釣り、道具も古すぎるものばかりなので新たに買い足した。そして実際に釣りに出てみると、これがなんと勘の鈍っていることか!思うように釣れず、むきになるばかりだ。
意気込んだ割には、釣果は大したものではなかった。しかし、久しぶりに「何かに夢中になる」という体験ができて、私には大きな満足感が残った。「とても楽しかった、誘ってくれてありがとう」と、心からお礼が言えた充実した一日だった。
その後、釣りに誘ってくれた人と相談して、「もっと多くの釣り仲間を作ってみよう」ということになった。話の中で「釣り好き」ということが分かれば、積極的に誘ってみようというわけだ。
私のように定年後の居場所がない人は、きっと他にもいるだろう。そんな人たちとともに楽しみ、どんどん新たな居場所を作っていけるようになりたい。この釣りがきっかけで、最近はそう前向きに考えられるようになってきた。
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