「お一人様の老後」を考える
2012/5/23 前向き人生 さん
妻に先立たれてもうすぐ20年たつ。
そして、私たち夫婦には子もいなかった。
妻が亡くなる前に「もしいい人がいたら再婚していいから」とは言ってくれたものの、そんな出会いもなく、ここまで来てしまった。そう、つまり私は、今で言うところの「お一人様」という状態だ。
もちろん、お一人様の状態は今に始まったことではない、再婚をしなければずっとお一人様だということは、理屈では分かっていたはずなのだ。しかし、ここ数年やはり体力的に「老い」を感じることも多くなり、これからの老後を本当にお一人様で過ごさなければいけないのか、という事実を改めて直視した時には、何とも陰鬱な気分になった。「寂しい」という気分が、私の心に大きくのしかかってくる日々が続いた。
だが、今の私は案外「お一人様の老後」を満喫している。
少し前の話だが、ちょっとした転機があったのだ。それは、代わり映えのしない日常生活の中で、何気なくつけていたローカルテレビの番組だった。そこに出てきたのは、私と同じく、家族に先立たれて「お一人様の老後」を過ごしている男性。しかも私よりも年上だ。
しかし、その顔は生き生きとしていたのが、私にとっては新鮮だった。どうして連れ合いもいない寂しい人生で、そんなに生き生き出来るのか。番組を見ているうちに、その理由が分かってきた。
その男性は、物事を前向きに考えられる性格の持ち主なのだ。怪我をしても「怪我をしてしまった」と落ち込むのではなく「この程度で済んだから運がよかった」と考え、お一人様の老後生活を送ることに関しても、「寂しい」と思うのではなく「とにかく自由なので好きなことをやっています」という考えをするのだ。
そういえば、私だって自由だ。そして、若い時ほど活発には動き回れないものの、まだまだ病院のお世話になるほどでもない、そこそこ健康な体がある。
それなのに何だ、自宅からほとんど動きもせず、楽しむこともせず。落ち込む気分になるのも当然ではないか、と、今さらながら自分に呆れてしまった。とはいえ、今まで「動かないお一人様生活」を続けてきた私は、いきなり何をやっていいのか分からない。そこで、その番組に出ていた男性の行動を参考にさせてもらった。手軽なところで真似できそうなのは、映画鑑賞だ。
最寄の映画館では、シルバーサービスデーというがあったので、その日に行かせてもらった。すると、もちろん夫婦連れの人も多いが、私と同じく一人で来ている高齢者も結構多かったのだ。「何だ、意外と仲間は多いではないか」とホッとすると同時に、私の中で心の中の「つかえ」のようなものが、すとんと落ちた気がした。
「一人でも老後を楽しんでいる人はたくさん居るというのに、これは私もつまらない老後など送っていられないぞ」と、ますます前向きな気分になれたのだ。テレビ番組ひとつがきっかけで、何とまあ単純なことだと我ながら思うが、結果としては、あの時テレビをつけていて良かったと思っている。
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