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所ジョージさんの昔話

2012/12/13  このはのこ さん

定年後の生活
昔々の大昔の話ですが、無名の所ジョージさんを見たことがあります。もう30年以上前の話です。

今はなき渋谷のジャンジャンというライブハウスに行ったときのこと。ジャンジャンというのは伝説のライブハウスで、渋谷の西武百貨店から公園通りを原宿の方に上っていく途中の坂にあったものです。今や渋谷は若者の街として知られていますが、僕らが高校生の頃は渋谷なんかただの平凡な町にすぎなかった。だって夜の10時を過ぎると、飲み屋はほとんど閉まってしまうんだから。高校の文化祭の打ち上げなんかで飲むとこ(飲んじゃいけないんだけど)は渋谷では全然なかったんです。新宿までいかないとなかったんだけど、新宿はまた新宿で全学連とかの残党も一杯いて危ない町だったのです。

それはともかく、ジャンジャンの話。お目当ては矢野顕子。当時売り出しはじめのミュージシャンでしたが、あまりライブとかやらないので貴重な機会でした。ジャンジャンは地下のステージで、100人も入ればいっぱいとなる狭さ。それだけに熱気がこもる、そういうライブハウスでした。その前座に所ジョージさんが出たのです。

当時の所さんは、今とは全然違って、当然まだ若くて、ばりばりのリーゼントで頭をポマードべったりにして、黒いサングラスをかけ、革ジャンで、その当時はやっていたダウンタウンブギウギバンドの宇崎竜童かと思わせるような風貌。ほおもこけていたかな。それがギターを持って登場。もちろんバックバンドなんかもついてない、一人でギター一本。サングラスの奥から観客を睥睨しています。

まったくの無名のミュージシャン。これは硬派のばりばりだな、と思いました。当時は学生運動などでちょっと殺伐とした時代だったのでなおさら。そう思ってみていると、歌い出したのが、コミックソング。どんな歌だったのかはもう覚えていませんが、なんか「じゃんけんがどうのこうのという変な歌で、がくっときたのを覚えています。これ私だけでなく、狭いホールのお客みんながそんな思ったのを知りました、何しろ狭いので、そういう空気は伝わってくるのです。それにもかかわらず、所さんは例のごとき、ひょうひょうとして短い歌を何曲か歌って、今と全然変わらなくて、前座としての役割を果たして舞台を引いていきました。今から思えば、曲はコミックソングだったけれど、合間のコメントは大しておもしろくなかったなあと。本人も本人なりに緊張していたのかもしれませんね。ただ、あまりに人を食ったステージだったので、その後の本命の矢野顕子さんのステージがかすんでしまったのも事実で、いまだに所さんの衝撃は忘れられません。

それに現在に至るまでテレビの中で彼は自然体のひょうひょうとした態度で、30年前と全然変わらずご健在であるところがなんともいいようがなく、変わらないで居続けてくれることが何ともうれしく存ずる次第でございます。

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