お墓のこと、夫のこと(1)
2013/10/25 五月 さんわたしの住む近辺には、公園墓地が所々にでき、広告が入るようになって久しい。
その昔、柳沢吉保が奨励して、さつま芋を作るために、雑木林を造成させ、その落葉をさつま芋の苗床に使った「武蔵野の雑木林」。
若葉、青葉、夕映えに輝くさまなど、見応えのある風景を、かもし出した雑木林であったが、社会生活の変化にともない、放置されてエチゴネザサがはびこり、荒れ放題になっていた。関越自動車道インターに近く、私鉄沿線からも近いという地の利もあってか、かっての面影もなく開発され、墓地に変わりつつある雑木林が増えているのである。
わが家が墓地を購入したのは、平成元年。
そのころ近くには、所沢霊園しかなく、墓石が建つだけの面積でも、高額で手が出ず、越生にある霊園は、それより広い面積が所沢霊園と同額であった。東京から遠く、当然のことであったが。わたしは、小高い山だった墓地から望める景観に魅せられ、夫は、たまたま息子が広い墓地がいいよなどと、言っていたこともあってか? 七㎡の墓所を購入した。
外柵もすぐに頼み、「真ん中の石は、墓を守っていく方が建てればいいんですよ」と、石屋に言われ、完成した時、「これでいつ死んでもいいね」と、夫と二人で笑い合った。
夫が腸の手術を受けて四年目になり、家族が元気な時に墓地をと、願ってのことであったが、わたしたち夫婦は早手回しが好きだったのである。
その時点でわたしは、車の運転ができたので、五十キロほどもない距離とて、遠いとも感じなかったが、昨年夫が逝き、墓参をと思っても、車の運転ができなくなってみると、越生は遠い。
折りも折り、今年になって、町に公園墓地が完成し,連日墓地案内の電話がくる。
めったに、固定電話が鳴ることがないわが家に、一日に三回も電話のベル。すべて墓地の件。
時間かまわず、電話という奴は、人の家にドサドサと踏み込んでくる感じだ。一度こんなやり取りをした。
「家は墓地ありますので」
「どちらにお持ちですか」
「越生です」
「遠い所にお持ちの方で買い替える方もいます」うそつけ――。わたしはからかいたくなった。
「あぁ改葬という手もあるんですね。改葬するには、越生を更地にしなけりゃならないと思うんですが、その方はお宅でしてくれますか」やんわりと、益々何も知らない老人ぶって、話に乗ったふりをする。
「それは・・・お客様の」みなまで言わせず、すかさず言った。
「やっぱり無理ですよね。まあ家は他県にある訳ではないので、改葬するつもりはありません」
無言で電話は切れた。※続く。
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