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ちんぎょのパコはびょうちです

2014/3/20  ちゅんたろー さん

定年後|思い出

今はもう27歳の次男が、サザエさんのタラちゃんくらいのころ、「き」が発音できず「ち」としか言えなかった。

「キンコンカンって言ってごらん」「・・・チンコンカン」

「これ好き?」「・・・ぼく、これチライなの」

面白がって、私がわざと言わせようとするものだから、ますます「ち」が当たり前になってしまった。

「あなたのせいで言葉がおかしくなってしまう。」妻から、よく文句を言われたものである。

当時、我が家では、縁日で買ってきた三匹の金魚を水槽に飼っていた。

妻と子供が一緒につけた名前は、パコ・ピコ・ポコである。

赤い可愛い金魚で、ずいぶん長く生きたと思う。

ところが、可愛そうなことにパコが病気になってしまった。

体がふくれ、うろこが逆立ってきた。たぶんマツカサ病だったのだろう。

よく、「ごはんだよー」と言いながら金魚にエサをあげていた次男だから、可愛そうに思ったのだろう。「ちんぎょのパコはびょうちです」と言っていた。

パコには気の毒であるが、たいへん可愛らしく健気に聞こえた。

しかし、そのあたりから徐々に「き」も発音できるようになり、「きんぎょのパコはびょうきです」になっていった。

次男が「き」を正確に発音できるようになり、とてもとても残念に思った。

長男は一人目なので物珍しく、ちゃんと育てるから早く大きくなってね、という感じで接していた。

ところが二歳違いの次男になると、この可愛いらしい瞬間が少しでも長く続いてほしい、大人にならないでほしい、いつまでも子供でいてくれ、みたいな雰囲気に変わっていた。

親のピーターパン症候群である。親というものは、誠に勝手なものであることよ。

その後も、「チライ」だけは、私がその伝統を引き継いでいつも使っていた。

だから、今でも我が家の公用語では、「キライ」ではなく「チライ」というのが正しいとされている。

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