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便利さの前提

2011/10/9  一言居士 さん

定年後の生活|便利現在シニア世代である私が幼少の頃にはエアコンなど家にあるわけはなかった。テレビもなかった。今の子供たちからすれば、とても現実的ではないような生活だと思われるのだろうか。

日本が戦後の高度経済成長を遂げて以来、我が家にもテレビ、エアコンなどの家電製品などが揃い、生活はとても便利で快適なものになった。そしてその便利さは現代も引き続き、それどころか益々物質的な豊かさは向上している。買い物にしても24時間営業しているスーパーも多く、それどころかインターネットの普及によって家に居ながら買い物すらできるのである。

しかし、これらの便利さに時々疑問を感じることがある。
私は子供の頃に家にテレビがなかったから、いつでも情報をリアルに簡単に得ることのできるテレビが来た時には、とても便利で有り難いものだと思った。さらに楽しい娯楽番組を家族で楽しむ一家団欒も増え、心も豊かになったような気がしていたものだ。

しかし最近では、そのテレビも一家に一台どころではなく、リビングにあり、寝室にあり…はたまた子供部屋にまで、という家庭もあるのだから、一家団欒というよりは、個人が個室に引きこもりそれぞれが一人楽しみ、家族で共有する、ということにはなっていないように思うのだ。テレビどころかゲーム、携帯電話、パソコンなど、子供のうちから便利なものを手に入れる機会が多すぎるように思えてならない。

テレビのない生活を知らない子供がテレビの便利さを知ることはできるのだろうか。
かくいう我が家の既に独立している息子も、子供のころにテレビゲームを手に入れていた。夏休みには暑い外で遊び回るのではなく、クーラーの効いた部屋の中でテレビゲームに熱中していた姿も見ている。そしてその息子の子供、私の孫は、次々と出てくるゲーム類はもちろん、携帯電話も手に入れて、急な用事があるわけでもなく友人とおしゃべりを楽しんでいるようだ。
そもそも携帯電話も、営業をしていた私にとっては急な連絡などで手にした時には何と便利なものかと感動し、シニアとなった今では手放せなくなっているのだが…。

そして最近一番気になるのが電子書籍である。
これもインターネットなどの普及によってのものか、書店へ行かずとも書籍を手にすることができ、しかも紙ではなく画面で読むことができるという。
読書とは文化ではないだろうか。その文化すらこんなに姿を変えてしまおうとは…。
もちろん電子書籍も便利そうである。購入者にシニアの方が多いのは、「字が小さいと読みづらい」「目当ての本がすぐにみつかる」ということからであるらしいのだが、これもまた、それまでの「読書」形態を辿っているシニアだからこそ、その便利さを実感できるのである。そんな電子書籍すら、もうしばらくすると子供のうちから導入されることになるのだろうか?

何にしても、それがなかった時を知っているという前提のもとに有り難みが分かるというもの。便利になった世の中の権利を全て放棄せよとは思わないが、基本を知らずして簡単に手にすることに疑問を感じる今日この頃である。

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