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世相を斬る!(16)なぜ控訴しない神戸地検

2012/2/3  臥龍 さん

オピニオン|世相を斬る先ごろ、宝塚線脱線事故に関して、JR西日本前社長の山崎正夫被告の無罪が確定したというニュースが伝えられました。これを聞いて、「ええっ?」と思ったのは筆者だけではないと思います。2005年4月のあの脱線事故では、107人の方々が亡くなられ、562人の方々が負傷されたのです。事故の責任は一体だれがとるのか。山崎被告を無罪とした神戸地裁判決に対して、なぜ神戸地検は控訴しないのか。遺族の方々の無念さを思うと、筆者ならずとも、怒りがこみ上げてきます。

事故の最大のポイントは、安全を軽視した現場カーブの急曲線化や自動列車停止装置(ATS)整備の遅れとされています。事故の直接的な原因としては、運転士のスピードの出しすぎや運転ミスなどが問題とされました。しかし鉄道会社の場合、そうした人間の誤りを想定したうえで、なおかつ列車を安全に運行をするための装置、設備の整備が求められるのです。毎日、多くの乗客を乗せて運行する公共交通機関の、当然の義務といえます。

安全を確保する装置として、現在、多くの鉄道路線で整備されているのが、ATSでしょう。ATSは新幹線の安全性向上などに大きな役割を果たしています。

JR宝塚線にも、ATS装置は設置されていたといいますが、その技術は日進月歩で進んでいるのです。より高い安全性を確保するため、新しい技術の導入は欠かせませ。宝塚線は、そうした点で、新装置の整備を怠ってきたといわざるを得ません。現場カーブの急曲線化も、運行の効率性を高めることに大きな目的があったようです。

JR線は、旧国鉄からの民営化によって、私鉄との競争が激しくなっています。そのため、経営や設備投資の効率化が大きな課題になっていることは事実でしょう。しかし、それだからといって、安全をおろそかにすることは許されません。

今回の無罪判決では、「山崎被告の刑事責任は認められない」とされ、神戸地検も「控訴して一審判決を覆すことは難しい」というのが、控訴断念の理由です。山崎被告の上司だった歴代3人の社長も、不起訴とされています。3人については、検察審査会の議決によって、現在、強制起訴されています。しかし、山崎被告の控訴断念の理由として「会社の意思決定には多くの人がかかわり、個人の責任を問うことは難しい」という判断があったといいます。「みんなで渡れば怖くない」式の判決がまかり通るのでは、犠牲になった方々は浮かばれません。

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