世相を斬る!(20)エルピーダ倒産に思う
2012/3/2 臥龍 さん
半導体メーカーでは世界有数の企業であるエルピーダメモリが倒産しました。負債総額は約4500億円といいますから、製造業の倒産としては過去最大でしょう。このエルピーダメモリには、先ごろインサイダー取引で逮捕された経済産業省の元審議官が深くかかわっています。もともとエルピーダメモリは、日立製作所など大手電機メーカーの半導体部門を統合して出来た、いわば“日の丸会社”です。半導体の国際競争が激化する中で、日本の技術の生き残りをかけて、経済産業省主導によって設立された会社なのです。経済産業省の指導によるこうした日の丸会社は過去にもいくつか見られますが、この種の会社では、表向き、国際競争力強化を旗印にしながら、官と企業との癒着を強め、天下り先確保の思惑すら垣間見られるのです。
かつての高度経済成長期には、官主導による企業の育成、国際競争力強化のための支援は、日本産業の牽引という点で、一定の役割もありました。しかし、リーマンショック後の、世界経済の停滞の中で、環境は大きく変わりつつあります。官が前面に出て産業を主導する時代ではなくなっています。むしろ、政府の規制を出来るだけ排除し、企業の自由な競争によって、民間活力を発揮させることが、これからの日本の産業に求められているのです。
それにもかかわらず、経済産業省は、さまざまな理由を見つけて、企業経営や産業に介入しようとしています。経済の停滞によって、権限が縮小しつつある同省の復権を図るねらいのようにも思われます。
逮捕された元審議官は、エルピーダメモリ設立当初から、事業に関与し、2009年の経営危機に際しては、経済産業省の手による改正産業再生法を活用して、公的資金の注入を行いました。一企業に国民の税金である公的資金を注入することは、異例のことです。日の丸会社の半導体技術を守るというのが大義名分だったのですが、それは結局、一時的な延命策に終わりました。しかも、そうした過程で知り得た情報をもとに、エルピーダメモリの株式売買を行なったわけですから、言ってみれば、元審議官は、エルピーダメモリを“食いもの”にしたことになります。
こうした役人は、もちろん極めて少数でしょう。しかし、職務上、企業経営や産業政策と深くかかわりを持つ経済産業省で、インサイダー取引が行なわれることは、同省に産業行政を任せられないことになります。
今回のエルピーダメモリの倒産が、インサイダー取引と直接的な関係はありませんが、会社設立から倒産に至るまで、経済産業省の深い関与があったことは間違いありません。インサイダー取引はそうした関与の過程で生まれた犯罪であり、改めて官と民との関係が問い直されるでしょう。
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