現場ひとすじ
2012/3/25 現場主義 さん私はこの2月から新しい職場で働き始めた65歳の看護師です。
私の年代には比較的珍しい、男性看護師です。看護婦さんという呼称が一般的だったころには、その呼び名にときどき難渋することもありましたが、元来体力勝負のこの職場では男の看護師は重宝され、私もまた現場ひとすじで40年以上働いてきました。この職にあしを踏み入れたのは、看護婦が金の卵といわれた時代、昭和30年代後半です。
父が早世し、4人の子どもを抱えて母は生活保護を受けながら食うや食わずの生活に追われたので、私を含むきょうだい(姉ふたり、妹ひとり)全員が看護師の免許を持っている、というのはまさに「くいっぱぐれない」ために選んだ道と言えるでしょう。
ちなみに妻も娘も看護師で、唯一息子だけが違う道を歩んでいます。さて2ヶ月ほど前のこと。
職場で突然体調を崩し、現場離脱を余儀なくされました。予定ではあと1年は同じ職場の現場を全うするつもりでした。
元気だけが取り柄でしたので、まったくもって青天の霹靂でした。看護職というのは、いつでもどんなところでも「万年求人」の職域です。
65歳だといっても、来て欲しいというありがたい申し出が結構あるのです。
ただ、病院ではなく介護施設ですがね。
特養ですと所定の人数の看護師を配置することが法律で決められていて、こんなじいさん看護師でも需要があるのです。
というのも、介護系施設の看護師は給料が安いこともあって若い看護師さんは来たがらない。そこで、定年後の看護師に白羽の矢が立つわけです。
それにあの職場は介護師の職場であって看護師の出番はほとんどありませんからバリバリの看護師でなくても十分勤まるのです。何やらいっぱしの肩書をもらったものの、今の私は一日の半分以上を机で過ごしています。
40年以上現場で手足を動かしてきた身にとっては、この状況はことのほかつらいです。慣れないパソコン作業は、それこそ60の手習いに近く、ほぼ一から十まで若い人に聞かなくてはなりません。
そういうのが嫌だというのではなく、私は根っからの現場人間なので、体を動かしたいんですね。
エクセルで勤務表を作るのも半日仕事です。あの線を引けばこの字が消える、印刷が2枚に分かれてしまう・・・。
情けない話ですが、それが時間つぶしともいえるような仕事のなさです。あっちからもこっちからもナースコールが鳴って夜勤がしんどいの、気むずかしい患者がどうのって言っていたころが無性に懐かしい。
電脳社会になっても、人間の病気は減ることはありません。むしろ心の病気はずっと増えています。
人間は動物ですから基本的に体を動かさないとダメになってしまいます。
今さらながら、自分の環境が変わったことでそれを実感しています。もう一度、現場に戻りたいと考えるのは少なくとも65歳で就職できた幸運にバチがあたるでしょうか。
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