世相を斬る!(25)電力地域独占にメスを
2012/4/6 臥龍 さん
東京電力の4月からの料金値上げをめぐって、中小企業や消費者団体などとの間で、トラブルが頻発しています。
「値上げの通告が一方的だ」「値上げを飲まなければ電気を止めるなどとは、恫喝に等しい」「電気の購入先を選べないので、泣き寝入りです」…。値上げをめぐって、電力需要家からのこうした反発が強まっているのも、原子力発電所事故を起こした東京電力に対して社会の厳しい批判が高まっていることが背景にあると思われます。
しかし、原子力発電所事故を別にしても、電気料金の値上げには、大きな問題が含まれています。
そもそも電力の供給は、北は北海道電力から南の沖縄電力まで、電力10社ごとに地域独占供給体制が敷かれているのが実情です。
そのため、従来、電気料金の値上げは、経済産業省の査定があるとはいえ、電力会社の一方的な意思によって、容易に実施されてきました。
この地域独占体制にメスを入れない限り、値上げの根本問題は解決しないと思われます。電力供給に地域独占体制がとられたのは、戦後の電力不足と、産業復興のための電力安定供給が、当時の最大の政策課題となっていたからです。
そうした体制は、日本の高度経済成長に役立ったことは無視できませんが、経済が低成長時代に入り、電力が余っている現在でも、独占体制がとられていることに大きな問題があります。もちろん2000年代以降、独占供給への見直し論が高まり、段階的に電力の自由化が進められました。
つまり、より競争を促進し、出来るだけ安い電気を供給しようというわけです。
そうした自由化に対応して、新規の電力供給会社が参入してきたことも事実です。
しかし、自由化は形だけのものに終わり、現在、新規参入の電力供給会社の電力シェアはわずか3%に過ぎません。
大手電力会社の間でも、地域を越えて電力を供給するケースはほとんどありません。電力自由化が進んでいるイギリスなどでは、電力利用者が、より安い電力、あるいは価格は割高でも環境にやさしい電力を購入できるシステムが普及しています。
電力会社だけでなく、再生可能エネルギー事業者、ガス会社、石油・石炭などのエネルギー会社が市場で自由に競争して電力を販売する体制です。日本の場合、自由化を阻んでいる要因として、発電部門と送電部門を電力会社がすべて保有していることも見逃せません。
それを分離して、自由化を促進させることが求められており、政府のエネルギー・環境会議でも検討が進められています。
民主党政権は、これまでの政権でやれなかった発・送電分離に取り組む方針を打ち出していますが、果たして本気でやるつもりがあるのかどうか。
電力の地域独占に風穴を開ける一歩として、また、自由化の試金石としても注目されるところです。世相を斬る!
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