定年後の生活･･･シニアの群像（１）異業種交流

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定年後の生活･･･シニアの群像（１）異業種交流 2012/8/8

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異業種交流に生きがい

シニア｜定年後の生活

将来を嘱望されたエンジニア

浦和市にお住まいのSさん（６８歳）。Sさんは、現役時代、大変優秀なエンジニアとして周りから評価されてきました。一流国立大学工学部の応用化学を出られ、東証一部上場の大手総合化学メーカーに勤務しました。

もともと、頭脳明晰な上、物腰も柔らかく、会社では将来を嘱望されてきました。転勤で、工場勤務となることもありましたが、Sさんはいつも前向きで、仕事にうち込みました。会社では、将来、取締役はもちろん、社長候補の一人というのが、衆目の一致するところでした。

不況の影響～自分の限界を感じる

しかし、不況の影響で、Sさんは、営業エンジニアとして、販売の第一線で仕事をする立場に置かれたのです。化学一筋の技術屋さんであるSさんにとっては、販売は大変つらいセクションでした。はた目からは、がんばり屋のSさんとして見られましたが、内心、ストレスがたまり、上司とも意見の合わない日々が続きました。

そして、５０歳になってまもなく、Sさんは「開発部長」の辞令を受け取ったのです。
一流会社の部長職ですから、他から見れば栄誉なことですが、Sさんと同期入社の人は、すでに常務をはじめ、何人かは取締役の椅子に就いていました。
シニア｜生きがい
この時から、Sさんは、自分の限界を感じたといいます。Sさんに言わせると、外見はともかくとして、自分自身は、こだわりのある人間であると分析しています。自分の得意分野、あるいは好きな事柄には徹底的に打ち込むが、そうでない場合は、意欲がわかないというわけです。営業エンジニアとして、販売に出たときがそういう時期であったと振り返ります。

サラリーマンとして、会社内で出世できるかどうかは、単に、頭がよい、仕事がよくできる、というだけでは、十分ではありません。自分に不向きな仕事でも、同僚や部下の協力を得ながら、チームとして業績を上げる、部下の能力を最大限に発揮させて、会社全体の潜在力を高める、そうした力量が管理職に求められるのです。

異業種交流会を立ち上げ

Sさんは、自分の力の限界を感じてからは、６５歳の定年後のことを考えるようになったそうです。幸い、化学技術分野の知識、ノウハウは、社内でSさんの右に出るものはなく、６１歳で、子会社に移籍となり、化学技術に関する国際特許関係のリサーチの仕事を任されました。この時に、Sさんは、第二の人生設計として、異業種交流会を立ち上げました。当初は、会社仲間や関係業界の人たちが中心でしたが、その後、高校、大学時代の同窓、同期生、化学や技術に関係のない人たちにも声をかけ、今では、会員は１００名近くにのぼっています。

Sさんは、現在、週３日出勤すればよい境遇ですが、残りの日々は、自宅で、会員との連絡、会のスケジュールづくり、講師選び、イベントの計画等、結構忙しい毎日を過ごしています。とくに講師選びや会場のセットは、大変だといいます。時宜に適ったテーマとそれにふさわしい講師の選定は、Sさんのこれまでの人脈などが役立ちます。
定年後の生活｜シニア
また、会場も、企業の社員寮などを利用しています。月一回、夕食をはさんで３時間ほどの講師のお話と質疑応答など、お酒も出て、会の後半は、楽しいおしゃべり会になるそうです。お酒とお話好きのSさん、異業種交流会がなによりの生きがいと話しています。ただ、現在の境遇も、週３日とはいえ、会社に籍を置かせてもらうからこそと考えています。恐らく、７０歳になれば、会社を完全リタイアしなければならないと思われます。その時に備えた異業種交流会の体制づくりを今から考えていかなければ、とSさんは話しています。