家族が認知症に!? 成年後見制度を利用しよう!
2015/9/11認知症を家族が発症したら、「介護をどうする?」「誰に相談したら良いの?」「こうした症状にはどう対応したら良いの⁉︎」と言った不安が先立ち、混乱の中で介護生活に入る人がほとんどでしょう。
少し介護に慣れてきたからといって、気が休まることはありません。介護サービスを利用したらしたで、スタッフにも気を使います。病院通いにも付き添いが必要です。
介護休暇が実際に取得できる職場環境とは限らないでしょう。自分の有給休暇を使い、それでも職場に気兼ねしながら介護している人は少なくありません。そのような毎日の中で、ついうっかりしてしまうことがあります。認知症の人にも相続権があるということです。身内に亡くなりごとがあった時、認知症の人が相続人にいたことで、遺産分割協議が滞ることが少なくありません。
【認知症の人の意思を確認しない遺産分割協議は無効】
認知症の症状が進行して、自分で意思表示ができなくなってしまっても、「認知症だから」といって家族が独断で手続きをできないことはたくさんあります。
たとえば施設の入居費用を本人が受け取っている年金から引き落とすため、金融機関で通帳を作ることになったとします。
その場合、委任状を家族が書いて金融機関に持参しても、手続きはできません。住民票をとるという程度のことなら、認知症に罹った人間の署名と家族の署名がある委任状を窓口に持参すれば、手続きはできます。しかし、財産行為に当たる通帳の作成ということになると、家庭裁判所から後見人と認めるという決定を得た書類が必要になります。その場になって慌てる家族は少なくありません。
通帳を作る程度でも、「認知症」というのはネックになります。
ましてや遺産分割協議となると、認知症に罹った人が相続人にいた場合、想像以上の困難があります。父親が死亡して、認知症に罹っている母親と子どもが2人いるとします。
その場合、相続人は母親と子どもたちの3人です。父親名義の家の処分について、子ども同士で穏やかに話し合いが済んで母親と同居している長男に名義を移すことに決まったとします。しかし、母親が認知症の症状が進行して状況を理解できないような場合は、「母親は認知症だから。面倒を見ている長男に名義を移すことに子どもの間で話し合いがついたから。」と言っても、司法書士は動いてくれません。
この場合、母親と子ども2人は、同じ相続に対して利害関係が対立するからです。
利害が対立する一方が認知症を発症して状況を理解できない場合、状況を理解できない人間の利益を守るために成年後見人がつく必要があります。
実際に良心的に母親の介護をしていたとしても、そのような事情は考慮されません。法律行為を行うためには、成年後見人をつけなくては、先に進めないのです。成年後見人をつけないで行う遺産分割協議は、本人の意思が確認できないもの、本人の利益を正当に守っていないものとして無効になります。
【成年後見人を選ぶにはどのような手続きが必要?】
成年後見人をつけるには、認知症に罹った本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。
申し立てをする人の住所地を管轄する家庭裁判所ではありませんので、注意してください。申し立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族などです。
申し立てを受けた家庭裁判所では後見開始の審判手続きを行います。そして、成年後見人が選出されます。その決定書があると、本人を代理して金融機関で通帳が作れます。
また、選出された成年後見人は、認知症を患っている本人の代理人として遺産分割協議に加わります。ただし、成年後見人の選出手続きは、家庭裁判所に申し立てをしてから選出されるまで、数ヶ月から1年近くかかることもあります。
また、先ほどのケースで成年後見人として子どもが選出されていた場合は、特別代理人を新たに選出する必要があります。
子どもでは、同じ相続人として、認知症に罹った母親と利益が対立するためです。特別代理人には、司法書士や行政書士、弁護士、社会福祉士等がなることもあります。
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