民事信託を使った遺産分割対策
2016/4/1相続で揉める要因でとても多いのが、自宅不動産の相続です。自宅不動産は分割や売却が容易でないため、自宅を相続する人に相続分が偏ってしまうので、他の相続人が不満を抱えてしまうことが多く、遺産分割の話し合いがつかないのではないでしょうか。
さっそく事例を見てみましょう。
家族構成は母・長女・長男の3人。長女には子が3人、長男にも子が1人います。長男家族は父母と同居し、長女家族は自宅から離れた地方マンションに住んでいます。
父は2年前に亡くなって、自宅不動産(評価1億円)と預貯金・株などの金融資産(2000万円)は母が相続しました。母の想い
「長男に自宅を引き継ぎ、代々のお墓も守ってもらいたい。夫が亡くなってから体調を崩すことが多くなり、今後の自分の介護や相続の問題について何から始めたらいいか悩んでいる」長女の想い
「長男は今まで家賃のかからない自宅で過ごしてきたのに比べ、自分は家を建てるのにローンをし、子どもの教育費も払ってきた。にもかかわらず長男が家をもらい自分の相続分が少ないのは納得がいかない。長男は母の面倒もあまり見ていないようだ。相続の時は長男には少し身銭を切ってもらってでも、お金を払ってもらいたい。」長男の想い
「実家に住んでいるとはいえ、家も古くなってきて修繕費もかさむ。固定資産税も自分が払ってきた。これから母の面倒も見なくちゃいけないのに、外に行って大変さも分からない長女と同じ相続分というのもおかしい」この場合、通常勧められるのが「遺言書」です。お母様が自宅不動産を長男に引き継ぐようにして、金融資産を二人で分けるような内容のものになるでしょうか。ただ、自宅不動産の割合が高いので、長女は法定相続分(2分の1)で分ける金額(6000万円)よりもはるかに少ない金額しかもらえないことになってしまいます。また、金融資産を全てもらったとしても遺留分(3000万円)よりも少ない金額です。遺言書を書くにしても遺留分が主張されることを想定しておくべきですが、この遺留分の支払い方法を細かく設定することは遺言書ではできません。また、お母様が万が一認知症になってしまったりすると、財産管理などに支障をきたすこともあります。
そこでこういった問題に対応できるのが、「民事信託」の制度です。信託の仕組みを使えば、遺留分の細かい設定や財産管理方法なども今のうちから決めておくことができます。介護の貢献に応じた相続分の決定などもできます。≪信託とその他の制度の比較≫
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