世界に例のない徹底した平和主義を掲げる日本国憲法第9条 諸外国には憲法9条のような規定はあるの?
2019/12/4安倍首相が2012年に再登板し、最も議論があったのは、憲法9条をめぐる集団的自衛権行使の可否であった。もともと憲法9条へ日本国憲法の最も大きな特徴といえる。この憲法9条は平和主義を具現化した規定と言われているが、警察予備隊の設置に始まり、自衛隊の誕生と成長、そして従来、自衛隊違憲論を主張していた社会党の路線変更など、憲法9条をめぐる社会環境は激変した。
今回から数回にかけては、この諸外国に類を見ない徹底した平和主義を掲げるがまずはその内容から見ていきたい。
・徹底した平和主義を具現した憲法9条
まず、憲法9条は以下の様に定めている。
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、 国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
日本国憲法はこのように憲法9条に加えて、憲法前文においても国際協調、恒久平和主義を強調するとともに、上記9条で侵略戦争を含む一切の戦争と武力の行使及び戦争の誘因となる武力による威嚇をも放棄し、その趣旨を徹底させるために、戦力の不保持を宣言し、さらには国の交戦権まで否定している。
そもそも諸外国でこの様な厳格な平和主義を貫く憲法はあるのだろうか?
・同じ敗戦国であるドイツは26条で・・・
日本と同じく第2次世界大戦で敗戦国となったドイツはどうなのであろうか?ドイツでは基本法26条が以下の様に定めている。
(1) 諸国民の平和的共存を阻害するおそれがあり、かつこのような意図でなされた行為、とくに侵略戦争の遂行を準備する行為は、違憲である。これらの行為は処罰される。
(2) 戦争遂行のための武器は、連邦政府の許可があるときにのみ、製造し、運搬し、および取引することができる。詳細は、連邦法で定める。要するに侵略戦争は禁止され、連邦政府の許可があれば、武器を製造し、運搬し、取引をすることが出来るとする。同じ敗戦国のイタリアは、憲法11条において、
「イタリアは、他国民の自由に対する攻撃の手段および国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄する。国家間の平和と正義を保障する体制に必要ならば、他国と同等の条件のもとで主権の制限に同意する。この目的を持つ国際組織を促進し、支援する」
と定めている。この条項は日本と同じく、戦争放棄条項とされているが、イタリアでは、人道的介入や復興支援などを理由に憲法の解釈を広げ、他国への派兵を繰り返してきている。
完全なる非武装国はあの国・・・
日本国憲法同様に、非武装を掲げている国として、コスタリカが挙げられる。コスタリカ共和国憲法第12条には「大陸間協定により若しくは国防のためにのみ、軍隊を組織することができる。」としている。たしかにコスタリカは軍隊は置いていないが、国防のためにのみ、軍隊を組織することができるとしている以上、完全な非武装国家とは言えないとの意見も強い。コスタリカは制度上軍隊を持てることになっているが、運用として持たないことに決めている国家といえる。
一方で、完全に非武装のが世界に存在する。
その代表例は、、、
「バチカン市国」である。ローマ法王のいるバチカン市国は、バチカンのスイス衛兵が儀礼的に存在しているが、キリスト教精神を基調とする正義に基づき、武力紛争の回避を提唱しており、国軍は存在していない。しかしこれはローマ法王が存在する国であるから成立するとの意見も強い。
さらには財政上の理由から軍隊を行い国も少なくないが、集団的安全保障に組する国も少なくない。
この点で、日本国憲法は文字通り読むと、集団的安全保障も含めて一切が禁止されていると読むことも出来、極めて厳格な規定と言える。
そもそもなぜこのような規定が出来たのであろうか?次回はその沿革について検討する。
(文責:定年生活事務局)
参考文献:『世界の憲法集』(1998 有信堂)
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