お葬式の話(後編)
2012/2/95.遺族として(2)
告別式が終わり、無事に出棺が終わると、今度は火葬に立ち会います。①喪主は位牌を、遺族の代表が遺影を持つ。告別式から出棺までの間、位牌と遺影を持って棺に付き従います。
②野辺送り。車が一列になって火葬場まで向かうことです。昔の土葬では棺を先頭に袴で一列になって送っていった風習の名残ですが、子が親より先に死ぬ「逆縁」の場合は野辺送りをしなかったといいます。
③納めの式。火葬場に着くと、棺はかまどの前に作られた祭壇に安置され、納めの式が行われ、棺の窓が開けられ最後の別れをします。僧侶が読経する中を棺はかまどの中に入れられていきますが、最近ではテープで読経を流す焼き場も増えてきました。全員で合掌して見送ります。
④火葬は短くて40分、長いと2時間もかかります。その間遺族は別室で休憩します。軽い茶菓や飲食を用意して、火葬場まで同行してきた親戚、知人、友人などをもてなします。
⑤骨揚げ。火葬が済んだらもう一度火葬炉の前に集まり、遺骨を骨壺に収める骨揚げをします。2人が向かい合わせになって、箸をそれぞれ持って、2人が一緒に1片の骨をはさんで骨壺に入れます。それを2~3片入れたら次の人に箸を渡していきます。喪主からはじめて、遺族、親戚と故人との関係の深い順から行います。また、遺骨の足の方から上部に向かって行っていくのが普通です。そして最後に、故人に最も縁の深い人(喪主など)が、のど仏の骨を骨壺に入れて終わりです。骨揚げは地域によって違いがあるようです。⑥白木の箱に骨壺を入れ、喪主が持ちます。骨壺は自前で用意しても構いませんが、この白木の箱に入れることができるサイズであることが前提です。位牌と遺影は遺族が持ち、帰宅します。
⑦換骨法要。家に帰ると、手を洗い、塩を体にかけて身を清めます。香炉、燭台などの仏具と、生花、果物などを飾った後飾り壇(多くは葬儀社が用意してくれます)に遺骨を多さめた箱、位牌、遺影を収めます。そして49日の忌明けまで設けておきます。
収めたら、灯明をともし、線香をあげて「換骨法要」の読経が行われます。宗派によって換骨法要は換骨勤行、安骨諷吟、換骨回向ともいいます。ここで初七日も一緒に営むのが一般的ですが、昔はもちろん7日目に行っていました。
⑧精進落とし。⑦まで終わったら、親族、近親者、参列者に酒食のふるまいをします、これが精進落としで、昔は肉、魚などの生臭ものは避けた精進料理が出されましたが、現在はあまりこだわらないようです。
これで葬儀そのものは終わりです。でも、遺族にとってはまだいくつかの手続きが残っています。⑨事務の引き継ぎ。葬儀社などが行っていた葬儀事務を引き継ぎます。葬儀の会葬者名簿、供物や香典の控え、弔電、弔辞などを引き渡してもらいます。会計の精算なども行います。香典などは現金ですので、きちんと数えて照合しておかないと、あとでトラブルの元になりかねません。
⑩挨拶回り。翌日から、僧侶や世話役、葬儀を手伝ってくれた人、あるいは故人の恩人や仕事上のつきあいの深い人などに挨拶回りをします。誰のところに行くかはそれぞれの判断ですから、必ず行かなくてはならないわけではありません。
⑪会葬礼状を出す。後日、葬儀に参加してくれた人に礼状を出します。これで遺族としての葬儀に関わる行為はすべて終了します。ただ、地域によって違いがあったり、簡便化されていたり、すべてを自分でやる必要がないものがあったりしますので、個別にご判断を。うちの地方ではこうだ、このあたりではここが違う、というような情報がありましたら、投稿していただけたらありがたく思います。
葬儀が済んでからは追善の法要があります。初七日は葬儀と同時に行うことが多いのですが、そこからは、14日目、21日目、28日目、35日目と7日ごとに行い、そして49日目で一区切りします。死者はこの世とあの世の境をさまよっていたのが、この49日目で死者の世界へきちんと旅立つとされます。
そこからは、新盆と続き、死後1年経った祥月命日(死亡した日の翌年の同日のこと)に一周忌を行います。さらにその翌年が3回忌(死亡から2年目。満で数えます)。7回忌、13回忌、17回忌、33回忌、50回忌と続き、その後は50年目ごとになります。これを年忌法要といいます。この場合、13回忌で一区切りとなります。49日と一周忌と13回忌だけというところも多いようです。6.遺族として(3)
葬儀が滞りなく終わっても、まだ遺族にはやることがあります。名義の変更や公的な年金などの処理、遺産関係など、電話一本で済むものもあれば、必要な書類をそろえなければならないものもあって、どちらかと言えば、葬儀よりもこっちの方がめんどくさくて煩雑です。
死亡から14日(2週間)以内に出さなければならないもの
①世帯主変更届(故人が世帯主だった場合)
②国民健康保険資格喪失届け(故人が被保険者だった場合)
③国民健康保険加入(故人が加入者で遺族が扶養家族だった場合、死亡と同時に遺族も資格を失うため)
④介護保険の資格喪失届け(故人が対象だった場合)また、すみやかに手続きしなければならないものは、
⑤年金受給停止手続き(個人が年金を受給していた場合、手続きをしなければそのまま年金が支払われ、これがわかった時点で一括で全額返還を求められますのでご注意。また、停止手続きと同時に、未支給の年金があれば請求できます)
⑥ガス、水道、電気の名義変更
⑦電話、NHK受診料の名義変更
⑧公団、公営住宅の賃貸契約の変更
⑨クレジットカード、その他会員権の解約
⑩運転免許証、パスポートの返却
⑪携帯電話の解約すぐにどうこうと言う訳ではありませんが、放っておくと後々問題になることがありますので、きちんと手続きしておきましょう。
また、そのほかにも、
⑫生命保険、死亡保険金の請求(故人が加入していた場合。契約書で請求期限が決められていますので、できるだけ早く請求します)
⑬準確定申告(故人が自営業だった場合、その年の1月1日から死亡した日までの所得を申告します。会社員なら会社がやってくれるので、その必要はありません)
⑭高額医療費還付の請求(高額医療費は自己負担限度額を超えると還付されます。死亡にまぎれて請求することを忘れてしまいがちですが、2年以内に請求してください)
⑮医療費控除(同じように医療費の控除分も請求できます)
⑯遺族年金などの請求(国民年金に加入していたら、遺族基礎年金、寡婦年金、一時金のうちのどれかを受け取れます。また、厚生年金または共済年金だと遺族厚生(共済)年金または遺族基礎年金、中高齢寡婦加算などが受け取れます。一定の条件をクリアしなければならないので、担当の役所で確認してください)そして故人の最大の処理案件が「相続」です。これが最もトラブルになる種で、まさしく親族間で骨肉の争いを引き起こすことが多いのです。
相続については丸々単行本一冊費やしても足りないので、ここでは手順と期日だけを書いておきます。
①7日以内に死亡届を出す
②遺言書の有無を確認する
③相続人を決める
④3ヶ月以内に相続の放棄、限定承認の意志決定をする
⑤相続人を確定する
⑥4ヶ月以内に準確定申告をする
⑦遺産分割の決定をする
⑧10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行う
⑨1年以内に遺留分の減殺請求を行う(受け取る遺産が法定より少なかった場合)こうした相続を完了することによって初めて故人の手続きが完了したものといえるでしょう。もめればもめている間じゅう、故人は「成仏できない」ということです。
7.葬儀にはいくらかかるの
前回までに述べたように、葬儀には手間も時間もかかり、神経も使うものです。その儀式を手抜かりなく行うには葬儀社への依存度が高くなるのは仕方のないところ。悲しみにふける遺族がいちいち式の手配などできるものではありません。
その葬儀にはいくらかかるのかという点ですが、一言でいえば、
決まった値段はありません。
基準となる値段もありません。なぜなら基本的に葬儀社はものを売るのではなく、葬儀に関わる経験とノウハウを売るものだからです。原価形式で料金を決めることができない(一部、お棺や生花などは別です)業態ですから、葬儀社によって大きく料金が違ってくることが多いのです。
ただ、それではあまりに不透明すぎるという批判があって、いまではどの葬儀社もある程度の明細票を出すようになっています。それをふまえて、葬儀にかかる費用内訳は次のようなものがあります。①葬儀一式。祭壇料、祭壇設営費、棺、枕飾り、線香、ローソク、納棺、位牌、生花代、祭壇用供物、各種案内板(黒枠に人差し指で場所を示すものなど)、受け付け事務用品、後飾り壇など。
②外注費。会葬礼状、返礼品、遺影写真、ドライアイス、遺体搬送費、送迎バス、ハイヤー、タクシーなど。火葬料、火葬場および控え室使用料。
③式場費用。
④飲食費。通夜ぶるまい、精進落としなど。
⑤お布施。読経料、戒名料、お車代など。
⑥その他。親戚の宿泊費。心付けなど。
で、トータルでいくらなんだ、と思われる方は多いでしょう。いま言ったようにはっきりとは決まっていないのですが、ごく大ざっぱな目安として、40人前後の会葬者がいる規模で、120~150万円くらいというのがかかる費用というところでしょう。実は⑤のお布施の部分を加えるか除くかでずいぶん費用が変わってくるのです。お布施というのは僧侶の読経料もそうですが、主なものは戒名料です。戒名というのは故人の死後の名前であり、戒名があることによって、いったん死んで清浄な体になり、生まれ変わることができるという仏教の考え方から来ています。そのため、遺族としてはできるだけ立派な戒名をつけてもらいたいと思うのは人情ですが、身も蓋もない言い方をすれば、「金を積めば」いい戒名がつけてもらえます。だいたい全国平均で40万円くらいだと言われますが、100万円くらい出す遺族もあるそうです。僧侶がいくらいる、というような金の話をすることはありません。基本的には「お気持ちだけで」という姿勢なのですが、だいたいの目安を知っておけば、交渉もしやすいでしょう。
先にも述べましたが、葬儀社のコストはほとんどが経験とノウハウ料です。ですから、具体的項目をずらっと並べても、その中にノウハウ料などを潜り込ませているので、最終的には100万円を超えるところに落ち着くことが多いようです。
ただ、最近では生協などの協同組合で「葬儀一式25万円」などといった格安の葬儀を請け負うところが増えてきました。民間の葬儀業者も競争激化から低価格志向が強まっています。安いからといって飛びつくのではなく、その25万円でどこまでやってくれるのか、ということを是非とも確認したいものです。人件費が入っていない、祭壇料が含まれていない、などということもあって、後でごっそり請求書が回ってきたりして後々のトラブルになりかねません。必ず「事前に」確認しておくことが大事です。
8.いい葬儀社の選び方
こうしたお金の問題も含めて、いい葬儀を行うには、いい葬儀社を選ぶことが必要です。
それは当たり前のことなのですが、いざというときにはなかなか難しい。
早い段階から葬儀になるとわかっていたら、葬儀社を選ぶ時間的余裕があるのでしょうが、急死などの場合はそういう心のゆとりもなく、病院が契約している葬儀社のいいなりになることも多いようです。また、生前から葬儀社を決めるのも縁起が悪いと一日延ばしにしているうちに亡くなってしまうというケースも少なくありません。あるいは、葬儀社同士を入札で決めるというのも死者に対して冒涜しているような気持ちになってしまうという人も多いでしょう。ただ、こういう決定はある意味ドライにやらなければ一歩も前に進みません。費用と手間を秤にかけ、いい業者を選びましょう。
葬儀業者には、
①専門業者
②冠婚葬祭互助会
③JA系
④生協系
⑤大手チェーン系
⑥自治体系
などがあります。①の専門業者はいわば町の葬儀屋さんで、地元密着で長く、時には代々営業しているところもありますので、信用という点では安心です。一般的に費用は高めですが、遺族の要望をいろいろ聞いてくれる融通さがあります。
こうした業者は「普通の」葬儀には強いのですが、大手チェーン系などが手掛けるような派手な葬儀には対応できないようです。レーザーを散らし、花をばらまき、というようなショーアップされた葬儀を望むなら、やはり⑤の大手あたりが提供しているようです。
②の冠婚葬祭互助会というのは、会員制で事前の葬儀費用を毎月積み立てる方式です。いざというときに費用で慌てないで済むというメリットはあるのですが、実際の葬儀に積み立て費用では足りないことも多く、持ち出しになることもあります。最初に契約をよく読んでから入会せねばなりません。
③のJA系や④の生協系は収益事業というより会員サービス的意味合いが強いので、価格が安いところが多いようです。地域によって内容が様々ですので注意したいところ。単に自分のところで葬儀のビジネスをしているというのではなく、一般の葬儀社への仲介をするだけのところとか、実務を葬儀社に代行させるところとか、その形態は様々です。間にいろいろ入っていると、遺族の意志が通りにくくなりそうです。
⑥の自治体系では地域に住んでいる人を対象として自治体が行っているもので(委託や仲介などの形は地域ごとに違いますが)、公共の施設を利用することができるので、リーズナブルな葬儀が期待できます。
葬儀の時間は迫っています。悠長に取捨選択している暇はありません。
そんな中でどういう業者を選べばいいのか。最初に交渉したときに、好印象を持つとか、誠実そうだという印象で決める人も多いようですが、これはだめ。中堅以上の業者になれば、「相手に好印象を与えるマニュアル」というのができていて、機械的な笑顔、柔らかい物言いなど、だいたいマニュアル通りに接客するものです。最初の対応で選ぶとしたら、まず、無理難題を押しつけること。料金をこれだけでやってくれ、とか、これを是非入れてくれ、とか、時間はこれだけ、とか、きつめの要求をぶつけてみると、相手の本音が出てきます。「そんなのできませんよ」、「無理ですよ」とか拒絶されるか、それとも「それならこちらのプランの方がいいですよ」とか、「ではこうしましょう」とか、新たな提案を親身にしてくれるか、そういうところで葬儀社の実質がわかるものです。
またそういう姿勢を葬儀社に対して見せることで、ただいいなりになっているだけじゃないぞ、と言う遺族側の意志を表明して、葬儀を取り仕切るようにという暗黙の圧力になる効果もあります。要はお金の問題ではなく、いい葬儀を行えるかどうか、遺族が納得する葬儀であるかどうかが大事なのです。
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